09. きらきらの君に恋してる

──ご来場の皆様、もう間もなくショーが始まります。

 場内アナウンスを聞いたドワイトが「あっ、場所取るの忘れてた!」と慌て始めたので、ジムは「いーよ、そこの橋から見えるだろ。行こ」と彼の手を取った。

 クリスマスはどっか遊びに行こう、と言うドワイトに付き合って来たテーマパークは、同じことを考えているであろう恋人たちであふれていた。ぬいぐるみの耳みたいなお揃いのカチューシャ、ペアルック、リンクコーデ、何処を向いてもいちゃいちゃと浮かれた人、人、人である。

 自分たちも客観的に見たらそんなふうだろうか、と思いながら、けれどジムは握ったドワイトの手を離せないまま歩く。服はペアでもないし、お揃いのものも身に着けていないし、耳は馬鹿っぽくて断ったらドワイトも着けないと言ったので被っていない。

──恋人っていうより、保護者っぽいな。

 なにせ、計画は壮大なのに段取りの適当な彼に付き合っていたら、臨機応変力とでもいう能力が鍛えられてしまった。リードする方が性に合っているし。

「ジムは頼りになるな~~」
「お前、のんきしてるなよ、はぐれるぞ」

 フットワークは軽いし、瞬発力とか判断力は結構いい線いってるのに、ドワイトはどうも詰めの甘いところがある。それはバスケットボールの試合にも言えることで、ふたりの出会った他校交流試合でのプレイでもケアレスミスでボールを奪われるというだめっぷりだったのを思い出した。

 今日だって、ランチに行きたいと言っていたレストランの予約をしていなかったので、肝心の店に入れずしょげていたのを、すぐさまその場で空いていたディナーの席を確保し、「昼は軽くでいいだろ、食べ歩きしよーぜ」とか「ほら、夜の方が美味そうじゃん」とか言ってなだめたのだ。

 いまこの場で、自分たち以外にもこういうトラブルに見舞われた連中はいるかもしれない。そいつらはどうやって切り抜けているんだろうか。険悪なムードになるのだろうか。

──こういうのの積み重ねで別れる恋人とか、いそう。

 でも、ジムはドワイトのちょっと頼りないところも気に入っていた。しょげている顔とか、犬っぽくてかわいいし。いちいち表情をくるくる変えてはしゃぐ姿も眩しくて好きだった。彼の笑う顔が見たくて、ガラにもないテーマパークに来て、面倒見のいい彼氏やって、いまなんか手を繋いだまま広場を眺めて肩をくっつけあっている。完全に染まってるなあ、と思う。

 ふと周りを見てみると、楽しそうにいちゃつく恋人連中に囲まれていた。お揃いの耳が、ショーの音楽に合わせてゆらゆら揺れている。ドワイトもふわふわした髪を揺らして、「ほら、ジム見てる?」なんて顔を覗き込んできて。きらきら。輝くブロンドの光が目に刺さって。

──なんでこいつはこんなに眩しいんだろう。

 目を細めて「見てるよ」と返したジムに満足したのか、ドワイトはあっさりと広場に視線を戻してしまった。それがなんだか急に置いていかれたように感じて、とっさに「あとで耳、買おう」と言ってしまう。

「いいの!?」

 ぱっとまたこっちに振り返った彼の笑顔はやっぱり眩しくて、ああ、この顔が見たいから、こういうこと言っちまうんだよなあ、と。ジムは自分も笑ってしまった。