タイラーの胸にもたれながら彼の右手の甲にある火傷を舐めると、ぼこぼこしたおうとつが舌に気持ちよくてうっとりしてしまう。湯船に浸かっているせいか、皮膚が柔らかくなっていて、じゅ、と吸うとすこし入浴剤の匂いがした。苛性ソーダで焼いたというそれは唇のかたちをしていて、なんだか誰かのキスマークみたいだ。そう思ったら、ももも。みぞおち辺りから嫉妬心がせり上がってくる。
「妬くなよ、俺の唇の跡だぜ」
「じゃあ、僕にもつけてよ」
「あ〰〰それは……だめ」
なんで、と聞いたら「あんたのなめらかな肌を堪能できなくなるから」と返ってきて。なにそれ、僕だって君のあかしがほしい。だったらこれからはこっちの唇としかキスしない。とごねたら、代わりに手の甲をきつく噛まれた。ぐりり、筋が音を立てて痛む。でも、彼の歯が退いた後に残った噛み跡は、綺麗に整った前歯がまるく並んでエンゲージリングみたいだった。
「これ、お湯につけてたら消えるかな」
「さあ……でも、消えたらまたつけてやるよ」
僕の身体のあちこちを噛みたがるタイラーは、許可が下りればどこまでもがぶがぶ噛みまくる。なめらかな肌がどうのと言うわりに、噛み跡だらけになったおうとつのある肌だって美味しそうにしゃぶるじゃないか。と思ったけれど、まあいいか。
セックスの後、ふたりとも意識があるときはよく、猫脚のバスタブに浸かって一緒に湯船を堪能する。タイラーに背中をあずけて、お気に入りの入浴剤を溶かして。でも、彼は花の匂いとかは気に入らないらしく、いつもミルクの白い湯になるやつを入れている。
「なんかエロくていいな」
僕が白濁に濡れている様子で、またあそこを硬くするタイラーはかわいいなあ、と思う。ふたつくらいしか違わないはずなのに、どこか少年っぽいところのあるタイラーに対して、僕は子どものように感じてしまうことがある。でも、子どもとはセックスは出来ないから、彼が大人でよかった。だって、かわいいなあと思うのと同じくらい、えっちなことしたいなあと思うから。
背中にわざとぐりぐり硬いものを押しつけてくるいきおいに流されて、僕のものまで兆し始めていた。はあ、と熱いため息が出ると、タイラーは浴槽の縁に座って僕を目の前に座らせた。かわいい子の、かわいくない凶暴なペニスが丸見えで、恥ずかしいと感じるより先に「おいしそう」とか「舐めたい」とかいう気持ちが湧いてきて、思わず喉を鳴らしてしまった。
「食べたい?」
「うん♡」
素直でかわいいなあ、と笑われる。でも、素直でいるとタイラーはとても喜んでくれるし、その方がお互い気持ちよくなれるのをよくわかっているから、馬鹿みたいにへらりと顔を緩めて答える。あんのじょう、彼は嬉しそうに僕の頭を撫でて、そっと押さえつけるようにしてペニスへ顔を近づけさせた。
ぱくり、先端を咥えてしまえばもうとまらない。れるれると裏筋を舌先で愛撫し、竿を擦ったり陰嚢を揉んだり。さっきのセックスで何度も射精したはずなのに、そこはまたぱんぱんに張って精子を溜め込んでいた。
──うう、搾り取りたいぃ♡
はやる気持ちで必死にペニスを飲み込む。喉の奥まで到達した先端をごりごりと擦りつけられ、吐き気と快感のあいまったおかしな感覚に涙が出た。それでも、口の中からタイラー自身を追い出したくなくて。反射できゅっと締まる喉奥がとうとう快感しか拾わなくなるまで、ひたすら頭を空にしてものをしゃぶった。
「ん♡んううう♡♡っ♡♡」
「はは、そんなに美味い?」
うん、うん、とちいさく頭をこくこく振ると、よけい気持ちいいところに先端があたって目が回りそうだった。息が苦しい。鼻呼吸もままならないくらい奥まで押し込まれたペニスで窒息しそうだった。苦しい、気持ちいい、苦しい、気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい……。
ぐるん、と眼球がひっくり返って白目を向く。あ、落ちる──と意識を手放す寸前、タイラーがものを引き抜いた。ぴしゃ、と顔に生温かい体液がかかる。
「〰〰っ♡♡あ、たいら、の♡♡♡」
どろりと頬を伝う精液を指ですくって舐め取り、癖になる苦味にきゅん♡とする。「目、ちょっと閉じろ」と言われて瞼を下ろせば、彼は眉から伝う白濁が目に入らないよう大きな舌でぺろんと舐めて拭き取ってくれた。「まっず」と落ちてくる声。嘘だあ、こんなに美味しくてくらくらするのに。
「だめ、ぜんぶ僕が舐めたかった」
「わりい、ほら」
べっ、と出された舌にかぶりつく。じゅっと吸えば唾液と混じって甘露のような味わいだった。下腹の奥がきゅうん♡とせつなくなる。どうしてここが空っぽなの、と訴えてくる僕の身体はもう、タイラーのもので埋めてもらわないと満足出来ないのだった。反対を向いて、彼に見えるようお尻を後ろ手に開いて腰を突き出す。
「たいらあ、ね、僕のここ寂しいの……♡」
「ほら、お腹せつないってきゅんきゅんしてる♡」
「たいらあの逞しいので、ずっ……ぽり埋めて♡」
特別頭悪そうな台詞は、はたしてタイラーのペニスに響いたようだった。びきびきと凶暴なまでにふたたび勃起したそれが、すかさず僕の後ろにぐっっっとねじ込まれる。一度した後だったから、まだ柔らかかったそこはすぐに昂りを飲み込んだ。自分がこんなにはしたなくねだったり、受け入れたり出来るなんて、知らなかった。
タイラーと居ると、自分のえっちな部分がどんどん開花していくような気がする。でも、彼ってすごく性的にも魅力的なのだし、精力溢れているし、肉欲を隠そうとしないのだから、付き合って身体を重ねていたら僕にも影響があるのはあたりまえだと思う。「セックスも強い」とは彼の言葉だけれど、ほんとうだなあと自分の身体で実感する。
どちゅ、どちゅ、と激しく突かれるたび、浴槽のお湯もざぶざぶ激しく波打って縁から溢れた。
──はあ♡すっごい♡♡つよい♡♡
前立線をごりごりとカリ首が行き来して、快楽のスイッチをためらいなく押しつぶす。お腹の奥がじわっと濡れるような感覚がして、ないはずの子宮が疼くような気がした。
「はあ♡♡たいらぁ♡♡しきゅういれてぇ、♡っびゅーびゅーして♡♡♡」
君のこと孕んで産みたい、とかなんとか続けたと思う。記憶が曖昧だ。とにかく、無意識のうちに彼と見たアダルトビデオか何かの卑猥な台詞がこぼれてしまった。冷静な自分だったら口に出来ない台詞だ。動きを一瞬とめた彼に、引かれたかも、と思っていたら。ごっっっちゅん! とものすごい衝撃が胎内に轟いた。
「ひゃんっっっ♡♡♡♡♡」
「あんたさあ〰〰わざと? わざと俺のこと煽ってんの?」
クソッ、と狼狽する声が聞こえ、彼に余裕がなくなったのがわかる。ごちゅごちゅと奥の方で子宮口をこじ開けるような動きをするタイラーは、僕のお腹の下を手で強く押して、ペニスのかたちを教え込むように快楽の逃げ場を奪っていった。
「〰〰〰〰ッ♡♡♡いっ、く♡♡ぅ♡♡♡」
「あ〰〰きっつ♡いいよお、ジェイ♡♡もっと締めて♡♡」
「うんっ♡うんっ♡♡」
もう身体が僕の意思を裏切っているとしか思えないくらい、きゅうきゅうに彼のものを食い締めてしまう。何度もいって痙攣している僕の胎内は動きづらいだろうに、タイラーは構わず子宮口──結腸に亀頭をねじ込んでそこで種付けしようとしていた。
ぐっっっぽ! と入った瞬間に白目を向いて倒れかけたけれど、彼に支えられながら「まだ落ちんなよ」と頬を軽く叩かれて起こされる。意識を失うことも許されず、かといって猛攻を緩めることもしてくれない。
「ッお゙♡これだめっ♡♡だめ、なっちゃ……♡♡♡」
「はっ♡はっ♡あ゙ッ♡♡」
「たいらぁ゙〰〰し、しんじゃうぅ♡♡♡」
ばちゅ、ばちゅ、となおも激しく腰を打ちつけられてぐったりしながら、それでもタイラーが「ジェイ、だめになって♡」とか、「ごめん、もうすこしな♡」とか、「しなねえよ〰〰ジェイは強いもんな♡」とか励ましてくれるから、なんとか意識を保って快楽に飲まれまいとする。
でも、ただでさえ気持ちよさで馬鹿になりそうな僕のよわいところをごんごんと突いてくるから、とうとう頭が壊れてしまって、「は、あは♡だめ、なりゅ♡♡」とか、「〰〰っ♡♡♡がんばるう♡♡」とか、「や、っぱり……むりぃ♡♡おちんちんに負けゅ♡♡♡」とか喚いていた。すっごく恥ずかしい。なのに、卑猥な台詞を口にするのはびっくりするくらい脳が蕩けて心地よかった。
タイラーは、そんな僕の頭を後ろから撫でてくれて、身体じゅうのあちこちに噛み跡をつけた。まあるい肩とか、肩甲骨のでっぱったところとか、首の後ろとか。もう快感で馬鹿になった僕にはそれすら絶頂のスイッチになって、噛まれるたびにびくんと背をふるわせていった。
「そのうちこっちも仕込みてえな」
と、彼が僕の胸に手を這わせたときには、乳首に指が触れただけでびっくんと腰をふるわせて達した。「おお、仕込まなくてもイけんの? やらし〰〰♡」たぶん、そこを触られる前にいきすぎたせいだ。どこもかしこも快感を拾いすぎて感度が変だった。
「ちんこ触ったらどうなるかな」
なんて彼が言うから、僕は「やめて」と言ってとめなければならなかったのに、脳がふにゃふにゃになっていたので、「あ♡さわってぇ♡♡」と欲のままに願望を口に出していた。いい、もうとことん馬鹿になってしまおう、とか思っていたわけじゃなくて、肉欲のおもむくまま限界まで達したいという好奇心からだった。
後ろでタイラーが息を呑む気配がする。はあ、と熱い息が首筋に掛かって、彼の手が僕のペニスを握る。じゅこじゅこ、竿を扱かれて、先端をくるくると撫でられて。僕の数すくない男性の部分で感じる快感なのに、何故かそんな気がしなくて。クリトリスを擦られて感じるみたいな気分だった。なにせ、精液はいきおいなくとろりと垂れて、その代わりに潮がびゅうっ♡と吹き出したのだから。
「ッはああん♡♡♡」
ぷしゃッ♡♡と放たれた透明な体液は、とまることなく二度三度と断続的にぷしぷし♡♡♡と吹き上げる。「あ〰〰ジェイ、もうメスんなってるなァ♡」とタイラーが楽しそうに意地悪げな調子で耳元に囁く。うそ、僕、おんなのこなの? なんて、蕩けた脳がそれを受け入れてしまって。ついぽろりと「うれしい♡ぼく、たいらあのメスなのぉ♡♡」とこぼしていた。
「ッ〰〰だから! あんたマジ……はあ……そういうとこ好きだよ」
「えへっえへへ♡ぼくもすき♡♡」
笑うとお腹の中で彼のかたちがはっきりとわかった。きゅんきゅん♡と胸まで高鳴って、これ覚えなきゃ、覚えて、もうタイラー以外の誰もハマらないようにしなくちゃ、とか考えてしまって。僕は健気な気持ちで、ゆるく律動を再開する彼に合わせて胎内をきゅうと締めた。そうすると、タイラーはますます動きを激しくして、僕ももっともっとと彼に身体を開いて。
きりがないほど長い時間、ふたりでセックスに夢中になった。湯船のお湯が冷めてしまうまで。タイラーが何度目かの射精をして、ペニスを抜いた後ろがぽっかりと緩んで白濁を垂れ流すくらい激しく回数を重ねて。
「〰〰♡♡♡♡♡」
「はは、もうなんもわかんねえな」
いきすぎて馬鹿になった僕の頭と身体は、お湯に溶けてしまうくらいとろとろだった。中に入ったままの精液を掻き出される刺激でも軽くいって、「きゃう♡」と鳴いてふるえてしまう。くんにゃりとタイラーの胸に抱かれて浴槽から上がり、バスローブを着せてもらって、リビングに連れて行かれる間もずっと、タイラーの体温やミルクの匂い、息遣いなんかを感じてはちいさく身体をふるわせて甘く穏やかにこころが達していた──。
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グラスに氷をたっぷりと入れたミネラルウォーターを渡される。一気に飲み干せば、身体の内側が急速に冷やされてやっと息がつけた。タイラーはきんきんに冷えた瓶ビールを開けているけれど、僕はいきすぎてふらふらするので、アルコールを飲むのは無理だろう。やっぱり、彼はすごくセックスがつよいんだなあ、と感心する。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。君と一緒になってから、どんどんえっちになってる気がする」
「ふうん……でも、エロいことはいいことだぜ」
彼が自信満々に言うから、そうなのかな……う〰〰ん、そうかも……と納得してしまう。なんだっていいか。どっちにしろ、もう淡白な自分にはなれない。タイラーと淫らなことをするのにますます抵抗がなくなっていく自分も、最近は結構いいんじゃないかな、と思う。だって、それだけ彼を愛して、彼に愛されている証拠だと感じるから。
タイラー・ダーデンは自分のやりたくないことはやらない。だから、キスされたり噛まれたり抱かれたりするそのどれも、僕に対する精一杯の愛情表現なのだ。そう思うと、なんだかすごく嬉しくなってきた。
「ねえ、タイラー」
「なに」
「ふふ、呼んだだけ」
彼は「なんだそれ」と小首を傾げた後「ジェイ」と僕を呼んで、「なあに」と答えると「俺も呼んだだけ」とお返しをしてくれた。かわいいなあ。ますますタイラーにいとおしさを感じてしまい、僕は「あのね、タイラー。僕のこと、もっともっとえっちに愛でてね」と耳打ちをした。
──そうしてこの後、タイラーが三度目の臨戦体勢に入ってしまい、リビングで本日三戦目のセックスに突入するのだけれど、いまはまだ、ぽかんとしてビールをこぼす彼の表情を見るのに忙しいから、また今度の話なのだった。