まだ終わりにしたくない
タイギャツ/R18/文庫本/116P/500円(前回イベントより値下げしています)
以前オンラインイベントで無配した短編3編に、書き下ろし5編を加えた連作小説です。ファイトクラブのタイラー・ダーデンと、華麗なるギャツビーのジェイ・ギャツビーをクロスオーバーさせたカップリングの同人誌です。

タイギャツのどエロい本
タイギャツ/R18/文庫コピー本/46P/無配(web公開しているので!)
タイラーとギャツビーのどエロいえっち短編小説を3編詰めました。朗報!とにかくえっちです

サンプル
まだ終わりにしたくない
病室に飾ってある花を一輪ずつむしる。
まだ終わりにしたくない(再録)
床に落としたのを構わず革靴の底で踏み潰すから、白い花弁はひとつ残らず黒ずみ、もとのかたちを失ってしまった。これでオーケーだ。こんなもの持ってくる看護師が悪い。デイジーの花なんか、この世からぜんぶ消えちまえばいいんだ。
タイラーは、眠り続ける青年の頬に影を落とす睫毛をじっと見つめて、いまも彼が目を覚まさないことに安心する。どんな夢を見ているのだろう。理想的な愛の夢を見たまま眠っていればいい。現実の世界じゃ、女は電話なんか掛けてこなかったし、あんたは撃たれて死んだのだから。永遠の愛なんてなかった。残念だったな。まあ、おかげであんたは文学史に名を残し、おれが生まれるきっかけになったんだから。なくてよかったのかも。
「さむい」
真夜中のアイスクリーム(再録)
真冬の真夜中だっていうのにアイスクリームなんて頼むからだろ。とタイラーは思ったけれど、口にはしなかった。アイスのご相伴にあずかれなくなるからだ。ライトグリーンの薄っぺらい病院着の上に羽織らせたフェイクファーのコートは、本物の毛皮に比べればたしかに寒いだろう。いつかクマでも狩ってそいつを毛皮にしたら、ジェイに着せてやりたい。ウサギだとかテンだとかのリアルファーが似合いそうな面をしているが、彼に似合うのはもっと大きくて強い動物だと、タイラーは考えている。
深夜のデイリークイーンは全然人なんかいなくて、つまり店員も表にはいなくて。マシンの隣でスマホをずっといじくってる制服の女店員と、カウンターでいつまでもブリザードのカップをかき混ぜている眠たげな若い男と、タイラーとジェイの四人だけしかいなかった。
──振り返って、ホテルの清掃係はこう語る。
ファストフードで朝食を(再録)
「ええと、その人はとても綺麗な人……いえ、華麗なるって感じの人で、裸にバスタオル一枚巻きつけただけの姿で廊下に立っていたの。片手に新聞を持って、困った顔だった。ああ、これはオートロックが掛かって締め出されてしまったのかなと思ったら、案の定そうだったみたいで。マスターキーでお部屋の鍵を開けたら、こっちが恥ずかしくなるくらい素敵な笑みでお礼を言われたわ。ありがとう、お嬢さん、って」
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とまあ、こうしてホテルの一室に潜り込んだふたりは、とりあえずの根城を得た。モーテルよりも清潔感のあるいいところのホテルは、ジェイのためにタイラーが選んだ。
「ねえ、ピザってのが注文できるみたい」
デリバリーピザの救世主(書き下ろし)
ジェイの言葉にちょっと首を傾げる。まるでピザを知らないかのような話し方をするからだ。けれど、すぐにピンときた。一九二〇年も前半じゃ、まだピザなんてイタリア系の食うもの、くらいのイメージだったと思う。ニューヨークならピザ屋もあったはずだが、ジェイのきらびやかな世界には届かなかったのだろう。知らないのも無理はない。
「なに、レーンまで届けてくれんの?」
「うん。テーブルに番号書いてあるでしょ、それを伝えればいいみたい」
タイラーとジェイはチェーンのボウリング場にいた。乗り回した赤いスポーツカーを売り飛ばした金が思ったよりも多かったので、中古車を買ってモーテルに連泊し、歩いて行ける距離にある娯楽を制覇しようと、今日は道の反対側にあったボウリング場に来たのだ。
タイラーが夜勤の仕事に出掛けると、モーテルの部屋は途端に息をひそめてしまう。それはジェイも同じだった。彼がいないと喋る相手もいないし、なんとなく自分の存在を隠さなくてはいけないような後ろめたさもあって、どうしても黙り込んで過ごしてしまう。
カンパーニュの午睡(書き下ろし)
「外にプールあるんだし、気分転換に泳げば」とタイラーは提案してくれたけれど、ジェイは自分が死んだ瞬間のことを思い出すので、「怖い」と返した。彼はすぐ失言に気づいて「わりい、なんか映画でも借りてくるよ」と申し訳なさそうに頭を掻いた。
映画を個人宅で見られるようになるなんて、時代の変化はすごいなあ。と、ジェイは銀色のまるい円盤をプレーヤーにセットしながら思う。再生ボタンも取り出しボタンも、操作は一通りタイラーに教わったし、ひと月も日がな映画ばかり観て過ごしているのでもう慣れた。
カンパリをソーダで割って飲むジェイの横顔はかたちがくっきりしていて綺麗だ。普段は酒なんか舐める程度にしか飲まないのに、今夜は特別だった。なんたって休日前夜なんだから。乾杯のあとに続けて三杯空けたって不思議じゃない。でも、ちょっとペースが早すぎないか。タイラーは彼の様子を観察しながら、自分も瓶ビールを煽った。
眠らない夜のカクテル(書き下ろし)
ふたりはモーテル暮らしから一転、ワンルームを借りて一緒に暮らしている。間仕切りのない部屋は互いのプライベートもないが、そんなのいまさらだったし、石鹸作りは出来そうにない二口コンロのキッチンでも、ジェイのために食事を作ることは可能だったから、それでいい。
タイラー・ダーデンが賃貸に住むなんて、と以前の信奉者は思うだろうが、知ったこっちゃない。
蝶番のきしむわずかな音で目が覚めたのは、それが彼の帰宅を知らせるものだったからだ。ドアに背を向けて寝ている僕を起こさないよう、そうっと歩くタイラーの足音をいとおしく思いながら聞き耳を立てる。こつ、こつ、と靴が床板にあたる音。いつもならもっとゴッ、ゴッ、というような勢いのある歩き方をしているのに。やさしい子。
獣のつがいの砂糖漬け(書き下ろし)
底の硬いブーツが歩き回る音は、近づいたり遠ざかったり、また近づいたり。あれはソファにジャケットを落とした音、とか。きっとキッチンに行ったな、とか。僕の寝顔を覗き込みに来たのかな、とか。あんのじょう、タイラーはすぐ横まで迫っていて、寝たふりを続ける僕に気づかず小声で「ただいま」と囁き、髪にキスを落とした。
バーテンダーの夜勤を終えた彼は、いつもこうやって帰宅の挨拶をする。今日は起きていたけれど、たぶん眠っているときでもしてくれているのだろう。
勤務終わりの私服に着替えたジェイが俺の前に座っている。
乾いたジンジャーエール(書き下ろし)
バーカウンターを挟んだ距離は、いつもよりずっと遠い気がしてセンチメンタルな気分になってしまった。まるでタイタニックの船首と船尾に別れたロミオとジュリエットみたいだ。いや、ジャックとローズか。あの船はどっちから沈んだんだっけ。もしジェイと一緒に沈むことがあったら、彼を筏に乗せて、俺は待機している金持ち連中が乗ったボートまで泳いで運ぶ。力尽きるまで。いや、あれは筏じゃなくてドアだったかも。
キリがなくなって、どうでもいい思考の遊びを打ち消した俺は、目の前でにこにことアメリカーノを飲むジェイを横目に他の客から注文を受けてシェイカーを振る。カンパリがお気に入りの彼のために、いくつかおかわりの候補まで考えながら。ネグローニは外せないし、それだったらオールドパルもいけるだろう。だけど、度数が高くなるからチェイサーを忘れずに出すこと。
タイギャツのどエロい本
アダルトショップで夜勤のバイトをしているところへ、ジェイが遊びに来た。
お試しバイブにドはまり編♡
「何がおすすめ?」なんて涼しい顔で聞いてくるから、「なんだよ、俺のじゃ不満?」と唇を尖らせてわざと不機嫌さをよそおってみたけれど、「そういうのいいから。ほかのにもちょっと興味あるんだ」と返されたらほんとうに不機嫌になってしまいそうだった。
だから、「今日入荷したバイブやばいんだって。試してみる?」と聞いてしまったのもいたしかたないと思う。ジェイはまだ涼しい顔で「お試しってやつ? そんなのここで出来るの?」と言っているので、俺は「仮眠室使おうぜ。いま客いねーし」と彼を店の奥に連れ込んだ。
「意外と清潔」
「アダルトショップのことなんだと思ってんだよ」
「一生のお願いがあります……君のじ、自慰を動画に撮らせてください……」
ふたりのマスターベーション編♡
「? おお? いいけど……何?」
「えっ、いいの?」
逆に断られると思ったら頼んでないだろ、と思ったが、ジェイは本気でびっくりした顔をして目をぱちくりさせていた。べつに、あんたの頼みならなんだって叶えてやるけど、俺のマスターベーション動画ってとこにはかなり疑問符が浮かんでいる。
「あの、来週から僕、仕事で二週間も離れてしまうだろう。その間、あの……慰めになるものが欲しくて……ネットに繋がない端末に保存するから……」
流出のことを心配して言ってくれているのだろう。まあ、世間に俺のちんこが拡散されても痛くも痒くもないが、ジェイが困るのは問題だから、管理は任せるとしよう。
タイラーの胸にもたれながら、彼の右手の甲にある火傷を舐めるとぼこぼこしたおうとつが舌に気持ちいい。湯船に浸かっているせいか、皮膚が柔らかくなっていて、じゅ、と吸うとすこし入浴剤の匂いがした。苛性ソーダで焼いたというそれは唇のかたちをしていて、なんだか誰かのキスマークみたいだ。ももも。みぞおち辺りから嫉妬心がせり上がってくる。
いちゃらぶ浴室えっち編♡
「妬くなよ、俺の唇の跡だぜ」
「じゃあ、僕にもつけてよ」
「あ〰〰それは……だめ」
なんで、と聞いたら「あんたのなめらかな肌を堪能できなくなるから」と返ってきて。なにそれ、僕だって君のあかしがほしい。だったらこれからはこっちの唇としかキスしない。とごねたら、代わりに手の甲をきつく噛まれた。ぐりり、筋が音を立てて痛む。でも、彼の歯が退いた後に残った噛み跡は、綺麗に整った前歯がまるく並んでエンゲージリングみたいだった。