08. 白い恋人たち

「ねえレオ、丸いオーナメントってふたつ揃ったらなんか金玉みたいじゃん?」
「バッカ、そういうこと言うな! 雰囲気!」

 赤と金色のクリスマスカラーをした飾り同士がぶつかってかちんと音がする。チャドは面白がってその、アレみたいだっていうオーナメントを揺らして遊んでいるけれど、レオは全然面白くなさそうな顔で別の飾りを手に取った。

 もう十二月に入ってしまったのに、まだツリーを飾っていなかったので、仕事の休みが重なった本日ようやく飾り付けを始めたのだ。職場であるジムではとっくに大きなツリーを飾っていたけれど、レオはどうしても浮かれた行事の準備なんてのは後回しにしてしまう。

──だって、前はなかったもんな。

 そう、以前のうちにツリーはなかった。あっても、こんな部屋の隅を占領する大きいものじゃなくて、棚の上に置ける程度のちいさなものだった。これはチャドと同棲を始めたとき、彼が持ち込んだ物だ。生木じゃなくて人工樹の、量販店で売っている大量生産品だけれど。

「だってホリデーシーズンなんだよ!?」

 とは、チャドの言葉。彼はイベントごとを大事にするたちらしく、ツリーも飾りも、暖炉に吊るすためのでっかい靴下までも持っていた。「靴下なんて何処に吊るすんだよ。うち暖炉ないけど」と呆れて言ったら、「ベッドの横に吊るそうよ!」と元気よく返事が返ってきた。子どもじゃないんだから、サンタなんて来ないって知ってるだろうに。

──いや、こいつの場合まだ信じててもおかしくないな……

 となれば、夢のないことを言わないように気をつけないと。けれど、プレゼントはもう決めてあるから、当日こっそり靴下に入れておけばいいサプライズになるかも。チャドのびっくりする顔、それから嬉しそうにする顔を想像したら、なんだか楽しくなってきてふふ、と笑いが漏れてしまう。飾りで遊んでいた彼が、「なー、やっぱり見えるだろ?」と見当違いのことを言っているのも気にならないくらい。

「な、チャド。早くこれ飾って、ホットワイン飲もーぜ」

 いまレオは、乾杯でもしたい気分だった。チャドとの出会いにか、ホリデーシーズンに対してか。彼と一緒に暮らし始めてから、意見がぶつかることも価値観が合わないこともあった。でも、最後はなんだかんだ許してしまったり、受け入れてもらったりして、すこしずつ互いの領域を重ね合わせていられると思う。

──まあ、金玉はねーけど。

 かちんかちんと揺れる丸いオーナメントを飾ったチャドが、「俺、赤より白の方が甘くて好きなんだよね、白のホットワインにしよう」と答えながら残りもさっさと吊るしていく。手際がいいように見えるのは、慣れだろうか。彼が慣れ親しんだクリスマスの過ごし方に、自分も慣れていくのだろうか。

──それって、ちょっといいかも。

 染まっていく、というのとも違うけれど。チャドの好きなもの、楽しいと思うこと、嬉しいと思うこと、そういうものをぜんぶ見たいという好奇心に似た感情。これが愛ってやつなのかも、と考えたら、途端に照れくさくなってしまう。

「はい、これはレオが飾って」

 にこにこしながらてっぺんに乗せるきらきらの星を手渡してくる彼の、こういうところが好きだなあ、と実感してしまう。ホットワインなんか飲まなくても体温の上がったレオは喜んで星を受け取り、無事に大役を務めたのであった。