お試しバイブにドはまり編♡

 アダルトショップで夜勤のバイトをしているところへ、ジェイが遊びに来た。

「何がおすすめ?」なんて涼しい顔で聞いてくるから、「なんだよ、俺のじゃ不満?」と唇を尖らせてわざと不機嫌さをよそおってみたけど、「そういうのいいから。ほかのにもちょっと興味あるんだ」と返されてしまい、ほんとうに不機嫌になってしまいそうだった。

 だから、「今日入荷したバイブやばいんだって。試してみる?」と聞いてしまったのもいたしかたないと思う。ジェイはまだ涼しい顔で「お試しってやつ? そんなのここで出来るの?」と言っているので、俺は「仮眠室使おうぜ。いま客いねーし」と彼を店の奥に連れ込んだ。

「意外と清潔」
「アダルトショップのことなんだと思ってんだよ」

 脚付きマットレスのベッドと薄いブランケットしかないし、それなりに片付いているとはいえ休憩兼仮眠室は狭く、店内と隔てるものはしゃらしゃらのビーズカーテンひとつしかないせいで向こうの音楽とかも聞こえてくるけど、ジェイのお気には召したらしい。俺はさっそく彼をマットレスに座らせたら、持ってきたパッケージをばりばりと開ける。

「へえ、もっと性器丸出しみたいなかたちかと思ってた」
「わりとデザインきれいめなやつ多いよ、最近は」
「ふうん」

 曲線が段々になってすこし反ったかたちのシンプルな黒いアナルバイブ。箱の外装には「はじめての奥イキ♡」「奥まで届くロングタイプ♡」と長さを強調する文句が書かれていた。説明書きをざっと読めば、振動は弱から強まで無段階で調節出来るうえにランダム機能までついているらしい。ちょっと初心者にはきつそうな太いくびれ部分もあるが、ジェイなら入るだろう。

 電池でも充電でも使えるとあったので、新品の電池を入れてとりあえずバイブの醍醐味である振動機能を試してみることにした。ジェイに「じゃ、やるか」と言えば、彼は脱ぎにくそうなスキニーを自らするすると下ろし、抵抗なく下着までぽいとベッドの脇に追いやってしまった。この思い切りのよさにはいつも惚れ惚れする。

「ねえ、慣らして」

 下だけ素肌のまま、ジェイは自分の内腿を抱えて脚を開く。ニットの中に俺のでかいシャツを勝手に着ているせいで、サイズが合ってないからちょっと萌え袖っぽくなっていてあざとい。布切れの隙間からちらちら見える彼の性器はまだ反応していなくて、表情だって涼しげなままだ。

──逆にエロい。

 がぜんヤる気が湧いてきた。

 試供品のパッケージに入ったローションを取り、いきなり目的の場所──尻のあわいに潜む慎ましい穴にぶっかける。常温で冷たくもなんともないのに、ジェイは「んっ」とちいさく声を漏らした。「指入れるよ」といつものように中指から挿入して中を慣らす。このへんはなんか事務的な作業になりがちだけれど、「はあ、」とか「んう、」とか胎内を開こうと意識して呼吸するジェイの吐息を聞くのは好きだった。

「ね、もういいからあ……」

 気づいたら、ねちっこく慣らしすぎていたらしい。顔を耳まで赤く染めたジェイが、俺の腕を弱々しく掴んで甘ったるくねだる声を漏らしていた。この、語尾が伸びる話し方がエロいんだよなあ、と思いながら、三本入っていた指のうち一本を引き抜く。

 いよいよといった感じで、かたわらのバイブを手に取った。あんがいずっしりと重たい。俺はまだジェイの胎内に残している二本の指をピースするみたいに開いて、すこし空いた隙間に黒いぷにぷにの先端を押しあてた。はあ、と興奮を抑えきれない様子の吐息が耳に届く。ひく、とその先を望んでバイブの先端を食もうとする肉の動きがいやらしかった。

「あ……焦らさないで……」
「おー、じゃ一気にいくか」

 ずっぷ、と長大なそれを根本まで突き刺すいきおいで挿入する。細いくびれと太いくびれの両方が、内壁の抵抗にあいながらもぬぬ〰〰とジェイの胎内におさまってしまった。まあ、普段これよりぶっといブツを咥えこんでるんだから当然か。と思うのと、こうも簡単に奥まで咥えこんじまってまあエロく育ったな、と感心するのとで忙しい。

「〰〰っ! はあ……!」

 とつん、と結腸の入り口まで届いたブツは、異物感に慣れようとうねうねうごめく腸壁に歓迎されているようだった。ジェイが浅い呼吸で苦しそうにしていたから、「大丈夫か? キスするか?」と聞いたら「ん、する……」と素直な返事が来たので、喜んでその唇をついばむ。ちゅっちゅ、とリップ音を立ててするキスは安心させてやるときのお決まりだ。

「ん、ふ……」

 キスに夢中で蕩けている彼の顔を間近で眺めながら、ふと、いまバイブのスイッチ入れたらやばそうだな、という気持ちが湧いてくる。ので、俺は好奇心に抗わずスイッチを入れた。

「〰〰〰〰ッ!? ♡♡♡♡♡」

 がくっ、と唇が離れた。いきなり最強に振り切った振動がジェイを襲う。ヴヴヴ、と肉壁を隔てても聞こえる音がいきおいを表しているようですごかった。彼は腰を浮かして激震から逃れようとしていたので、ぐっと抱き寄せて体勢を固定する。

「ッ! ひあ♡♡ッやん……♡♡♡」
「これこのまま結腸貫いたらまじやばそうだよなあ」
「そ、そんにゃ♡♡の……♡だめえ♡♡♡」
「なに、想像してびくびくしてんの? ジェイはかわいいなあ」

 じわじわと泣き顔とイキ顔の中間みたいな表情で、ジェイは俺のシャツの襟を掴んで「だめっ♡だめだからねっ♡」と念を押している。それって、つまり「お願い、やって♡」ってことだろ。だから、俺はためらいなくバイブの持ち手をグッッッと奥の奥まで貫くように押し込んだ。

「ッ〰〰〰〰♡♡♡♡♡♡♡」

 ぐっぽ、と音を立てて先端が飲み込まれる。ジェイは涙をぽろりとこぼし、結腸にねじ込まれたシリコンのかたまりでイッた。腹の中にある快感のスイッチを押されて脳の快楽中枢がバチバチにキマったっぽかった。かたちのいいちんこを勃たせたまま、射精も出来ず女みたいにナカだけで感じ入っている。

「あ〰〰メスイキしたな♡」
「うう〰〰〰〰♡♡♡♡♡あう♡♡」

 快感が過ぎて喃語しか喋れなくなった彼は可愛らしかった。瞳が左右にふるふる揺れて、はくはくと息を呑む半開きの唇は唾液が垂れてつやつやと光っている。うまそう、と思って、その垂れたものを舐め取った。舌を差し込んで彼の舌ごとじゅう、と吸う。「はぐぅ♡♡」びっくん、とジェイが腰を突き上げたので、また絶頂に達したのだと知る。

 頭が馬鹿になったみたいに、というか、快楽中枢が馬鹿になったみたいに、いまのジェイはどこを触っても何をしてもイキそうだった。試してみたくて、内腿をそろお〰〰っと撫で上げてみたらびくんと反応してイッたし、へそをくりくり撫で回してみたらびくびくっと反応してイッたし、耳元で「イけ♡」と低音で囁いてみてもがっくん、と身体を揺らしてイッた。

──おもしれ〰〰。

 好奇心と悪戯心の赴くままに身体じゅうを触ってみてもよかったけど、いまはせっかくバイブを入れてるんだからこいつで遊ぼう。と、俺はとりあえず振動を停止してシリコンの棒っきれをじゅこじゅこ律動させてみた。結腸にハマったままの先端が動かしにくかったので、もういいか、とキツい肉輪から外す。

「ふぎゅう♡♡♡」

 ちょっとだけ快楽の渦から開放されたジェイは、それでも胎内で何がが動くたびいちいち大袈裟に反応するので飽きない。ぬぬ〰〰っと引き抜き、ずっっっぷ! といきおいよくまた結腸手前まで突き上げてみたり、入り口の浅いところでにゅこにゅこマッサージしてみたり、激しく前立腺あたりをじゅこじゅこ行き来してみたり。

 たまに振動を再開させて、ぐにぐにバイブを回しながら結腸口だとか前立腺だとか、入り口の締まるところをぶるぶる刺激してやる。どれがいちばん気持ちよさそうか比べてみようと思ったのだけど、ジェイはどれもこの世でいちばん気持ちいいといった顔をして受け入れてしまうから、何も参考にならなかった。

「あ〰〰♡♡♡あっ、あん♡♡」
「しょれ♡いい♡♡ッあ、ひゃうう♡♡♡」
「んっ♡♡しゅき♡♡♡ばいぶしゅき〰〰♡♡♡♡♡」

 声を抑えることも忘れて喘ぐもんだから、いつの間にか来店していた客だとか、ほかの店員だとかが、ビーズカーテン越しに息を呑んで俺たちの様子を伺っている。たぶん全員おっ勃たせてるんだろうな、ジェイのあまあまな喘ぎ声とか聞いて、痴態を想像して。はあ〰〰いらつく。気持ちの方じゃなくて、ちんこの方が。

 だって、そうだろ。俺のジェイがほかの男どもの今夜のオカズになってるとか、最高に勃起モンだな〰〰と感じる。あいつらはこの美しい淫らな生き物を味わえないけれど、俺は好きに舐めたり噛んだりちんこを挿れたりキスだってして味わい尽くせる。わりいな、この世界でジェイを抱けない男性諸君。帰ったら一人虚しく便所でシコってくれ。

 俺は、奴らに最上級のオカズを提供すべく(というより、最上級の敗北感を与えるべく)、もう一度ジェイの奥に振動するバイブを押し込んでイかせ、我を忘れたものすごい悲鳴のような嬌声を店に響かせることに成功した。

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 最後のとどめでジェイが気絶してしまったから、俺はバイブのスイッチを切ってぬぐぐ、と引っこ抜く。彼の媚肉はイキまくった後でもなおシリコンの棒っきれを離したくないようで、きゅうきゅうに抵抗したけれど、俺のちんこでもないブツをいつまでも挿れておくわけにはいかない。まあ、ちょっとだけ嫉妬したわけだ。いや、俺のほうが断然すげ〰〰からな。調子のんなよ。

 ざっとジェイの身なりを整えて、バイブも洗ってこりゃ買い取りだなと思っていたら、ぜひそれを買いたいと言い出す客がいて。でもまあ、断るだろ普通。そんで、そんな客をあしらったり店長にちょいどやされたり(でも今夜の集客と売上がすごかったらしいから強くは咎められなかった)して、シフトも終わったしってことで、俺はジェイを抱えて帰路に着いた。

 入り口にドアマンが常駐しているような高級コンドミニアムに、ジェイと俺は住んでいる。もちろん、俺の持ち物じゃない。ジェイは星が付くようなホテルをいくつも経営しているから、いっときはプラザの最上階スイートルームに住んでたわけだけど、俺と付き合うようになってからもうすこし所帯じみた住処がいいと言って、プラザの高級スイートよりはちょっと気軽な(とは本人談)一等地のコンドミニアムに引っ越したのだ。

 どこぞの馬の骨って感じの俺でも、「こいつ酔ったらしくて」と言えば気絶した家主を抱えて入れるのは、ひとえに俺がその家主の愛人だと思われているからだ。いやまあ、正確には違うけど、面倒だから訂正していない。

 自宅直通のエレベーターに乗って、スマートキーで部屋に入って寝室へジェイを運び、やっと腕が開放される。なんだか、重みがないと物足りなさを感じて変だった。簡単に彼の身体を濡れタオルで拭いたり、ルームウェアに着替えさせたりして、俺もシャワーを軽く浴びて隣に寝転がる。

 ふと、ジャケットのポケットからぼろんと転がり落ちそうになっているバイブを見て、やっべこれも見られたかな……まあいいか、と脱力した。結局俺が買い取ったそれは、後日ジェイがクソ真面目にしたレビューのおかげで飛ぶように売れた。インセンティブで上乗せされた給料を使って、俺たちはフラッシュモブを雇い駅でドラマチックなプロポーズごっこをしたわけだが、その話はまあいい。

 問題は、件のバイブをジェイがひとりで使ったり、クセになったのか使う回数が多いのでムカついてランダム振動にしてジェイのケツに突っ込んだまま夜勤のバイトに出たり、はたまたすっかりわからせられたジェイが、「今日はあ、これで三回もイッたの……♡♡タイラーは何回イかせてくれるかな♡♡♡」と顔の横に持ってトロ顔で誘ってきたりすることなのだが──いまはまだ先の話である。