素人淫乱宇宙飛行士マク◯ライド少佐45歳~未知なる快楽追体験の記録~ vol.1

──あらすじ。

宇宙軍所属ロイ・マクブライド少佐のもとに派遣されてきたのは、異色ともいえる経歴を持つ、元グリーンベレー所属のクリフ・ブース。任務で護衛を務めることになったクリフと行動をともにするロイは、次第に彼にこころを開いていく。だが、実はクリフはロイの失脚を狙った上官からの刺客だったのだ。彼は、どんな相手もあらゆる手練手管で陥落させるという性のスペシャリスト。脅迫材料にするため、あられもない映像を撮るように命令されたクリフは、色事に疎いロイの肉体を淫らに変えてしまおうとする。未知なる快楽の渦に引き込まれるロイの運命やいかに──。

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とある上官に呼び出されてオフィスを訪れたクリフは、形だけの敬礼をして、いつものように秘匿任務の命令を受けた。今回の任務は、宇宙軍に所属するロイ・マクブライド少佐のスキャンダル映像を撮ってこいというものだった。どうやら、ロイの活躍を快く思っていない上官が、彼を失脚させようと画策しているらしい。くだらない仕事だなと思ったが、資料にある顔写真を見て興味が湧いた。「手段は選ばん」と言われ、この清廉潔白な印象の男をどうやって落としてやろうかと、クリフは内心で舌舐めずりをした。

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「元グリーンベレー所属、クリフ・ブースだな」
「Yes, sir. 今回の任務から護衛を務めることになりました」

着任の挨拶と経歴の確認、任務の内容などを話しながら、クリフはロイを観察した。顔写真で感じた印象のとおり、まさに清廉潔白を絵に描いたような男だ。常に冷静沈着で、表情の変化に乏しいので、こころが読めない。噂によると、心拍数が八十を越えたことがないとか。人間関係を洗っても、いまは離婚した元妻と友人のような付き合いがあるだけ。恋人なし。ワーカホリック気味。探ってもスキャンダルになるような話題がない。

──だが、なければ作るまでだ。

クリフは、その容姿のよさを買われて、グリーンベレー退役後はセクシャル・エントラップメント、いわゆる性的な囮任務を依頼されることが多かった。この、性欲なんて全くありませんといったお綺麗な男を陥落させてあられもない映像を手中に収めれば、十分な脅迫材料になるだろう。結構好みの顔なんだけどな。と思ったが、仕事は仕事。クリフは、ロイと何日か過ごすなかで機会を伺いながら、表向きは真面目に護衛を務めた。

「少佐、次の目的地に向かうまでのルートです。ご確認ください」
「少佐、この地域は危険なので、絶対に離れないでください」
「少佐、また徹夜ですか。出発まで時間があるので、仮眠を取ってください」

生活の基準が仕事なせいか、ロイの私生活はあってないようなものだった。食事も睡眠も必要最低限。任務中はレーションで栄養を摂り、嗜好品はコーヒーくらい。睡眠時間は短く、オフィスに仮眠用のソファベッドがあるのに、使っているところを見たことがない。宇宙という、途方もない存在を相手にするのは、体力的にも精神的にも強くあらねばならない。けれど、ロイのそれは、ふとした瞬間に折れてしまいそうな強さだった。危ういな。クリフは、本来の任務そっちのけで、ついそれとなくロイの世話を焼いてしまった。上下関係の一線を超えない程度の気遣い。そのおかげか、宇宙船の乗り継ぎ時間に仮眠を促すと、素直に聞いてくれるようになった。待合室で、隣に座ったまま目を閉じたロイの頭が、クリフの肩にとん、と触れる。かすかに感じる寝息が穏やかで温かくて、ずっとこのままでいたい、と思った。

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そんなあるとき、クリフはロイの個人オフィスに呼び出された。  ここ何週間か、任務で行動をともにするうちに次第と打ち解けてきたので、すこしは信用されたのか、ロイはクリフにわずかな笑みを見せるまでになっていた。彼の微笑みは、まるで花が綻ぶように可憐だ。めったに見られない顔は、クリフの胸にしっかりと刻まれてしまった。最近は、自分に向けられる表情も最初に比べると和らいできたような気がする。しかし、訪れたオフィスで待っていた彼の表情は、思い詰めたように硬かった。

「君の経歴を洗い直した」

応接スペースのテーブルに広げられたファイル。クリフがいままでに就いた任務の詳細を記した書類だった。グリーンベレー所属時代のものから、退役後に就いた秘匿任務のものまである。ところどころ黒塗りにされてはいるが、聡いロイは気づいただろう。

「誰の依頼だ、ブース」
「はい、誰々です。なんて言えるわけないでしょう」

クリフがにやりと笑うと、ロイは一瞬、傷ついたような表情をしたが、すぐに無表情を取り繕った。「危うく信頼仕掛けるところだった」と呟く声は、かすかに震えていた。「依頼した人間の名前を吐けば、お前のことは不問にする」その言葉がほんとうか嘘か分からないが、ずいぶんとお優しいことだ。あんた、情があり過ぎるよ。クリフは思わず片手で口許を覆った。笑いが零れそうだった。「不問も何も、おれの本業はこれからだ。分かってるだろう?」とうとう言葉遣いを崩して、本性をあらわにする。ロイは、クリフをきッと睨みつけた。

「わたしにそういう手は利かない」
「そいつはどうかな」

すっ、とクリフが先に動いた。  特殊部隊仕込みの、目にも留まらぬ速さでロイをソファに押し倒すと、両手をひとつにまとめて捻り上げる。「くッ」とちいさく呻く声にぞくぞくとする。ロイも軍人の端くれだが、体格も腕力もクリフにはとうてい敵わなかった。「細えなあ」空いている手で、軍服のジャケットのなかを探る。シャツを潜り抜けて直に腰を撫でると、ロイはびくりと肩を震わせた。なるほど、感度はイイらしい。クリフは下唇を舐めて「楽しませてもらいますよ、少佐」と嘲るように口角を上げた。

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軍服の黒いネクタイで両手を縛られたロイは、クリフのなすがままになっていた。固い生地のジャケットはとっくに袖を抜かれ、ソファの下に落ちていた。ネクタイと揃いの黒いシャツは、大胆にボタンを引きちぎられ、日に焼けていないロイの白い素肌を晒している。舌を噛んでしまわないよう、クリフは自分のネクタイを解くと、丸めて彼の口にねじ込んだ。「うう」と唸るような声が聞こえるが、無視して肌に触れる。前線でいくつも傷を負った自分の身体とは違う、滑らかな触り心地に、ついうっとりとしてしまった。外気に晒されたせいか、胸の突起がささやかに主張している。クリフは迷わずそこを抓った。「んッ」びくんと胸が反らされる。逃れようとする身体を押さえ込み、無防備な首筋を舐め上げた。

「あんた、いい匂いがする」

仕事柄、コロンなどは付けていないはずなのに、ロイの肌は清涼な匂いがする。鼻先で動脈を辿り急所を軽く噛むと、組み敷いた身体はびくびくと反応する。まだ自由な脚が「嫌だ」とクリフの腰を退けるように動いた。「おイタはいけませんよ、少佐」抵抗する膝を内側から持ち上げて開脚させる。片脚をソファの背に引っ掛け、スラックスの前立てを探ると、一気にファスナーを下ろした。機能性重視の色気も何もない下着のなかは、ほんのすこし兆していた。

「へえ、もしかして期待してた?」
「んッ、んん」

違う、と否定するように首を振っても、身体は正直だ。
躊躇うことなく、下着ごとスラックスを引き抜き、ジャケットと同じくソファの下へと落とす。あからさまに暴かれたことが恥ずかしいのか、ロイは顔を背けてしまった。その耳は赤く染まっており、上気した肌が匂い立つような色気を放って、無意識にクリフを誘っているように見える。恥部を隠したくて脚を閉じようとしても、体格のいい身体に阻まれてしまい、両手は縛られたままで、言葉もろくに喋れない。ロイは抵抗する手段を失ってしまった。

怯える様子があわれで、そそる。彼は、肉食動物の前に差し出された獲物だ。とあれば、存分に味わってやらなくては罰があたるだろう。「大丈夫、可愛がってやるから」クリフは、そうっとロイの髪を梳くと、まるで恋人がするように甘く囁いた。そのまま耳を食んで、隅々まで愛撫する。白い首筋を、胸を、脇腹を、するすると指の腹で優しく撫で、反応のいいところを重点的に擦る。急所に触れるたび、ロイの身体は面白いくらいびくびくと跳ねた。背を反らすと、胸を差し出すような格好になるので、勃起した乳首がクリフのジャケットに擦れてしまう。

──あ、だめ。

いけないと思うのに、その感触に抗えなくて、ロイは自分からジャケットに胸を擦りつけた。「ン、足りないか?」クリフは、彼の反応の変化を察して応える。触って欲しがりな薄ピンクの乳首を親指と中指で摘み、人差し指を使って細かく引っ掻くように刺激した。「ッ、んんん」ロイがのけぞって喘ぐ。気持ちいい、おかしい、こんなの、嘘だ。こころでは抵抗したいのに、ぴりぴりと走る快感を肉体は悦んで受け入れてしまう。期待以上によがる様子を見て気をよくしたクリフは、片方の胸に顔を寄せ、ぷっくりと膨らんだ先端を軽く噛んだ。「──ッ!」驚いてまた抵抗しようとするのを抑え、敏感な脇腹を擦りながら、乳首を甘噛みしたり舐めて転がしたりする。反応のいいところを同時に刺激することで、ここが感じるのだと刷り込んでいく。

──あ、あ、やだ、もう……!

びくん。
ひときわ大きく胸を反らし、ロイは達してしまった。「マジか。あんた、まさか乳首だけでイったの?」クリフはにやついて、自分のジャケットに掛かった精液を指で拭うとひと舐めした。ザーメンなんざ頼まれても口にしたくはないが。と思うも、つい好奇心が勝った。この男が次にどんな抵抗を見せてくれるのか、という。案の定、ロイは羞恥に顔を赤らめ、目に涙を浮かべながらも睨みつけてきた。まだまだ抗うつもりらしい。そうこなくちゃ面白くねえ。簡単に落とせる相手じゃ物足りない。

「少佐、部下の軍服に粗相するなんて、はしたないですね」

わざと階級で呼んでやると、急に立場を思い出したのか、ロイは「んんッ」と何とか声を上げようと必死に唸った。「何を言っているのか分かりませんよ、少佐」もう一度、今度は顎をすくい上げながら目を見てのたまう。普段は無感情な顔が、いまは屈辱と羞恥で色めき立っていた。クリフは背筋を走る嗜虐心にぞくぞくとしながら、ロイの鼻先に口づけ、あからさまに股間を掴んだ。いちばんの急所を押さえられて、彼が目を見開く。自分の行動によって、この組み敷いた美しい生き物がびくつく様子を眺めるのは愉しい。獲物をいたぶるような気持ちで、可愛がりたいと思った。

掴んだ股間をやんわりと揉んで、吐精したものでぬるつく性器を扱く。直接的な刺激に弱いのか、ロイのそこは素直に反応して硬くなっていった。それがあんまりにも慣れない様子だったので。「あんたのシコるとこ想像出来ないな。ここ自分でシたことあんの?」ふっと湧いて出た疑問を口にすると、彼は困惑するように眉を下げて涙目になった。何か言いたげに揺れる青い瞳。また好奇心がくすぐられ、クリフは片手でロイの口からネクタイを取り出すと、もう一度同じことを尋ねた。「なあ、自分でシたことあんの?」唾液が糸を引く布切れを床に落とし、優しく性器に触れながら純粋な眼差しを注ぐと、彼は唇を震わせて「あ、ある……」と答えた。

「へえ、何想像してすんの?」 「な、なんにも……あ、朝とか、生理現象でその、たつから、仕方なく……」 「まじで。聖人君子かよ。いやらしいこと嫌いなの?」 「ん、ん、よくない、ことだから……」

ジーザス! 禁欲的な男だとは思っていたが、ここまでとは。たしかに、任務で何ヶ月もプライベートのない空間で過ごす間、彼は一度もそれらしい欲を見せなかった。性欲が極端に薄いのかもしれないが、それにしても、天然記念物かと思う。クリフが物珍しいものを観察するようにじっと見つめていると、ロイは「み、みないで」と顔を腕で隠してしまった。可愛いな。もっと乱してやりたい。もっと、淫らで可愛らしいところを見てみたい。

「なあ、これは悪いことじゃない。あんた、おれのこと嫌いじゃないだろ。だったら、思い切って気持ちいいって素直になれよ、さっきみたいに」

赤みの差したロイの下唇を親指でなぞる。「な、おれに任せて」と優しく囁くと、彼はしばらく逡巡していたが、クリフが額に口づけると、こくりと喉を鳴らしてちいさく頷いた。

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「あ、あッ、やだ……!」

拘束を解かれたロイの両手が、性器をしゃぶるクリフの頭を弱々しく押し離そうとしている。ぴるぴるとうさぎのように震えながら快感に戸惑う姿は、いつもの澄ました彼とは大違いだった。いやらしくて、淫らで、それでいてまだお綺麗な部分を守ろうと必死になって。クリフは、そいつを取っ払ってやりたくて、ひたすらロイに快楽をほどこした。舌先で亀頭のくびれをぐるりとなぞり、先端をくじる。男の性感帯は正直なもので、あっけなく二度目の吐精をしてしまった。

「はあ、あ、もう、おわっ、た……?」
「まさか。これからですよ、少佐」

クリフは、口内に出された精液を唾液とともに手のひらへ吐き出すと、ロイの股ぐらの間へ突っ込んだ。双丘のあわいで色づく肉穴に、とろりと体液を垂らす。中指の腹で縁をくるくると撫でながら、すこしずつ慣らす前準備をした。他人にこんなところを触られたことがないのだろう。ロイは困惑して膝を丸めるように縮こまろうとした。クリフはそれを片手で制し、ぐっと大きく開く。室内灯のもと明るみになった後孔は、ひくひくと物足りなさそうにしていた。「やっぱり、期待してただろ」縁に引っ掛かった中指を、くちゅりとなかに差し込む。「やあッ」異物を感じて拒絶しようとする隘路を、無理矢理こじ開けていく。

はじめは頑なに拒んでいたそこも、三本目の指をねじ込んだあたりで観念したのか、何とか耐えようとロイは呼吸を整えていた。ただ指を挿れられるだけならば、直腸検査と同じだ。とでも思っているのだろう。けれど、これはそんなものじゃない。クリフは、異物に馴染んできたなかをぐるりと指で掻き回した。「ひうッ」突然動き出したものに驚いて引き気味の腰を抑え込み、さらに奥へと指を進める。腹の裏側にある前立腺を探り、わずかに膨らんだ場所をぐっと押し込む。

「ッあ、や、やだこれ、なに」
「ン~~、あんたの気持ちよくなれるところ」

余裕の表情で性感帯を刺激し続ける。
ロイはあえかな声を上げながら、自分がどうしてこんなに感じてしまうのかと恥ずかしくなって涙を流し始めた。「泣くなよ、別におかしくない。誰だって、おれにここを弄られたらたまんなくなっちまうんだ」色気を帯びた微笑は何処か空虚で。唐突に、ロイはクリフの資料を思い出した。セクシャル・エントラップメントの手練れ。何人もの相手を性に陥落させてきた悪魔のような男。そう、彼は仕事で自分に触れているのだ。その事実がどうしてか、胸をきゅうと苦しく締めつけてしまい……ロイはやっと自分の気持ちに気づいてしまった。「い、れて」聞こえるか聞こえないか分からないくらいちいさな声で、クリフに囁く。

「なに?」
「う、あ……いれて……はやく、すませて……」

まるで悲哀を含んだような、弱々しい口調。快感に飢えて焦れているわけではなさそうだ、と思った。クリフはひとの感情を察するのに長けている。この仕事を続ける上で重要な能力だからだ。何処をどうすれば獲物が自分の手に落ちるか。それを察して欲しいものを与え、夢中にさせる手練手管にはかなり自信があった。しかし、いまロイが欲しているものは、いままで誰にも与えたことがないものだった。彼が欲しいのは、クリフのこころだ。お優しい少佐は、こんなろくでもない男に純愛めいた感情を抱いてしまったらしい。

──だから、あんたってやつは。

「ロイ」  つとめて柔らかな声で名前を呼ぶ。
びく、とロイの身体が身じろいだ。階級でも蔑称でもない、はじめて口にするファーストネームは、舌の上で転がるように心地よくて、何故か溶けるように馴染んでしまう。

「ロイ、あんたを貶めようとした奴の名前を吐くよ。そうすれば、おれは御役御免になって、仕事じゃなく、ほんとうにあんたを抱ける」

頬に残る涙の跡を親指で拭い、自分の目を見つめるように促す。宇宙から眺める地球にも似た、何処までも広がっていきそうな青い瞳。潤んでまた零れそうな涙を唇で吸い、まぶたに口づける。「ん、」と上がるちいさな声は甘さを含んでいて熱っぽく、ロイの腕がクリフの後頭部に回された。「あの、ほんとうに」言っていいのか迷いながら、ロイはついに本心を口にする。「ほんとうに、抱いて、ください……僕、あなたのことが、」その先は、クリフに唇を覆われて音にならなかった。

「んん、んう」
いきなり口内に舌を差し込まれ、噛まないように歯列を開いて受け入れた。クリフの長いそれが、ロイの舌をぞぞぞ、と撫で上げてから上顎をくすぐり、とろりと唾液を流し込んでくる。飲みきれないものが口の端から垂れて顎に伝った。もったいない、ぜんぶほしい。息継ぎのために一瞬離れた唇を追いかけ、はしたなく舌を伸ばしてねだってしまう。もう一度重なる唇を味わいながら、ロイは自分の下腹部の奥がきゅんと疼くのを感じた。

なかに挿れたままの指を食むように、肉穴がきゅうと締まった。とめていた動きを再開して、また前立腺のあるあたりを強く押し込み、肉筒の内側をくちゅくちゅと音を立てて撫でる。「はあ、あ、あン」相変わらず反応のいい身体は、まだすこし戸惑いを含んではいるが、快感を受け入れようと必死に息を詰めている。「力抜いて、深呼吸するみたいに息して」指で慣らしながら、クリフはロイの短い髪を梳いた。頭皮に触れられるだけで感じてしまいそうだった。彼に触ってもらうと、何処もかしこも気持ちいい。と、クリフがロイのなかからそっと指を抜いた。

ちゅく、と粘液の糸を引いて離れてしまった指が惜しくて、ロイは無意識に肉穴をひくつかせた。異物だったはずなのに、いまは自分のものを取り上げられてしまったように寂しくなる。その気持ちを察したのか、クリフはロイの頬を撫でて「大丈夫、リラックスして」と言うと、自分のスラックスの前立てを開いた。下着をずらして取り出したものは、赤黒くて硬く屹立していた。こくり、とロイが喉を鳴らす。期待に満ちた眼差しだった。これを意識してやっているわけではないのが、可愛くもあり、おそろしくもある。クリフは、もうとっくに絆されていた。おそらくあの、待合室で肩に頭を乗せられたときから、ずっと。

「あんたのこと、愛してもいい?」
ずるい言い方だった。
そんなことを言われたら、応えるしかない。大型犬が飼い主の許可を待つような眼差しで見つめられて、ロイはたまらず「……はい」と頷いた。

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「あ~~ッ、あ、とま、とまってえ……!」

がつがつと腰を打ちつけられて身を捩るロイは、許容量を超えた快感に悲鳴を上げて、クリフの腕を力なく引っ掻いた。挿入されて、馴染むまでは動かさないと言い、ついばむように口づけてくれたときの彼とはまったく違う、獣のような腰使い。最初はゆっくりと動いていたのに、物足りなさに焦れたロイが「もっと」とクリフの瞳を見つめてねだると、彼は喉の奥で唸り「止まれないからな」と警告した。「それでもいい」と誘ったのを、ロイはいまさら後悔していた。激しい熱で頭がおかしくなりそうだった。はッはッと荒々しい息が首筋に掛かって、それにすら感じてしまう。瞬間、強烈な痺れが背筋を駆け上って、ぴんと爪先が引き攣った。

──なに、これなに、こわい、きもちいい……。

身体の内側で何かが弾けたように錯覚する。まるで、温かくじわじわと広がる甘美な波に浸かるような、とてつもない充足感に包まれた。「ナカでイけたな、いい子だ」なか、なかってなに、いくって、だしてないのに。はじめての感覚に混乱するロイを諭すように、これがいいことだと、気持ちいいことだとクリフは話して聞かせる。「ロイは射精しなくてもイけるんだよ、メスイキってやつ。ずっと気持ちいいのが続いてるだろ。まだまだ気持ちよくなれるから」おれに任せて、と下唇を撫でられ、ロイはふるりと背を震わせた。

「な、口に出してみて。ロイはメスイキ出来ます、って」
「や、やだ、は、恥ずかしいです……」
「だめ。恥ずかしがってたら、抜いちまうからな」

ぐちゅ、とまだ硬いままの性器が離れようとするのが嫌で、とどめていたくて。とうとう羞恥心を捨てたロイは「ろ、ろいは、あ、めすいき、できま、す……」と途切れとぎれに言葉を口にした。声に出してみると、とんでもなく淫らなことを言ってしまった気がして、顔が耳の裏まで真っ赤に染まる。それと同時に、ふわっと何かから開放されたような感覚に陥って、ないはずの器官がじゅんと濡れるように疼いた。「ん、よく言えたな」嬉しそうに笑うクリフの表情は愛おしげで、子どもを褒めるような手つきで頭を撫でられると、さわさわと胸の内側がさざめく。

額にひとつ口づけを落とされ、クリフがまた動き出す。
今度は深く抉るような腰使いで、ロイの奥を開くようにゆっくりと進んでいった。まだ快感の余韻が抜けないのに、さらに肉襞を擦り上げられてしまい、きゅうきゅうとなかが痙攣する。来ないで、と拒むように締まる肉筒はきつく、クリフは息を詰めて自分のものを埋めていった。やっと根本まで挿入したときには、二人とも大きくため息を吐いた。

クリフのブロンドの髪が、ところどころ汗でしっとりと束になって、ロイの顔に影を落とす。「いいか?」と聞かれて、何がいいのか分からなかったが、ロイは「きて、ください」と背中に手を伸ばした。直感で応えてしまった。夜の帳が降りる前の空みたいに深く美しい碧眼が、ぎらりと妖しくきらめく。あ、またやってしまった。と思ったときには遅かった。ばつん、と音を立てるほど激しく恥骨を打ちつけられる。「あッうう!」艶めいた悲鳴を掻き消して、どちゅどちゅと粘膜同士の強く擦れ合う水音だけが、部屋に響き渡った。

クリフはロイの腰を軽く持ち上げて支え、さらに奥を目指して腰を進める。性感帯に何度も猛りを叩きつけられ、ロイは快楽の渦に放り込まれたようにひたすら喘いだ。「だめ、いってる、めすいき、してる!」と訴えても、震える下腹を押され、とろとろと漏らすように吐精してしまう。出したのに、気持ちいい感覚が収まらない。とつり、最奥の壁に到達して止む動き。これ以上はだめだと思うのに、ロイのそこはクリフのものを欲しがって、先端にちゅうちゅうと吸いつく。

──もう、いいのかもしれない。

手放してしまえ。羞恥心も、抵抗も、抑制も。こころのなかで甘い誘惑の声が囁く。気持ちよくなれば、クリフさんはいい子だと褒めてくれる。クリフさんに褒められるのは嬉しい。愛しいひとに求められる喜びは、何物にも代えがたい。だったら、手放してしまえ。彼に任せれば、きっと大丈夫だがら。

そうして、ロイはすべてをゆだねた──。

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クリフが三度目の射精をしたとき、ロイは自分が何度達したのか分からなくなっていた。結腸口を貫かれてなかに精液を注がれたときは、身体の奥に放たれたものの熱さに感じ入ってイき、ずろろ、と抜かれる途中でまたイき、再び挿入されたときには肉穴に先端が触れただけでイってしまった。もう、全身が性感帯になって、何処をどうされても嬌声を上げてよがってしまう。

「あ♡またいぐぅ♡♡めしゅいぎしゅるう♡♡♡」

教わったばかりの淫語を喘ぎながらわななくロイの瞳は蕩け、淫靡な肉体を晒して悦んでいる。ここまで乱れるなんて思わなかったな。クリフは媚肉を味わいながら、すっかり淫乱になった彼の性器に指を添える。「ッあ、やら♡しょれよすぎう゛ぅ♡♡」竿を扱いてくびれと先端をくちゅくちゅ弄ると、ぷしッと色のない体液が溢れた。「ひ♡はひ♡ごめんなさ♡♡おもらし、しちゃ、た……♡♡」ひくひくと腰を痙攣させて泣き出すのに「違うよ、潮、潮吹きしたんだよ」と教えると、新しい言葉を覚えようとするみたいに「し、しお♡しおふきしたのお♡♡」と繰り返し口にするのが可愛らしい。クリフが「ロイはいい生徒だな」と耳の裏側を撫でて褒めてやれば「はい♡♡ろいはあ、いいせーとらから♡♡もっといいこいいこしてくだしゃ♡♡♡」と表情を崩して嬉しそうに手を伸ばしてきた。

その手を取って指先を軽く噛むと、ふるふると身を震わせて、ロイは半開きの唇から涎を垂らした。「きしゅ、きしゅして♡♡」赤く色づく舌を、いやらしくひらめかせながらクリフを求める姿は健気で、ついどろどろに甘やかしてしまいたくなる。口づけるために覆い被さると、なかのものが擦れてロイの膝がびくんと揺れる。ぽってりとした下唇を食み、じゅうと舌に絡めた唾液を啜ったり、とろりと垂らしたり。互いの体液が混じり合ったものを、ロイはうっとりとしながら、こくんこくんと飲み込んだ。くりふさんの。と思うと、どんな液体よりも甘露だった。

「ロイ、ロイ、可愛いな。こんなに無防備でやらしくて、もう放してやれなくなっちまう。なあ、ずっと一緒に居ていいか。任務なんかじゃなくて、これからもずっとお前のこと守ってやりたい」
この仕事を任されたのが自分でよかった。
ロイは強いのに儚くて、芯があるようでふとした拍子に折れてしまいそうで。現に、クリフが快楽を教え込んだらあっけなく陥落してしまった。それは、好意を寄せられているからかもしれないが、もし、ほかの誰かが彼に触れて同じことをしていたらと思うと──その先は考えたくもなかった。

「はい、くりふしゃ、すき、すきらから、ずうっといて♡♡♡」
クリフの首にしがみついて、すりすりと額を擦りつけてくるロイ。子どもが甘えてるみたいだな、と苦笑しながら背中を優しく叩いてやる。すん、とちいさく啜り泣く顔を、どうやったら笑顔にしてやれるだろうか。そんなことを思いながら、腕のなかの身体をぎゅう、と抱きしめた。

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個人オフィスのデスクで淡々と書類仕事をこなしているロイの後ろから、すっと何かが差し出された。ふわりと香るのは、いつもクリフが淹れてくれるコーヒーの匂い。これくらいしか嗜好品がないからと、わざわざ豆から挽いてくれるので、まるでカフェのものみたいに美味しい。

「……ブース。もうこんな時間か」
「ええ、少佐。あまり根を詰めると身体に毒ですよ」

あれから、秘匿任務を命令した上官を訴えたものの、証拠不十分で一蹴されてしまった。そのせいというか、おかげというか。護衛任務に就任したという表向きの辞令だけが残り、クリフはまだロイのそばに居られることになった。異様にロイに執着する上官だったから、もしかするとまた刺客を送り込んでくるかもしれない。だが、そのときにはおれが居る。

──必ず、彼を守ってみせる。どんなことからも。

クリフの密かな誓いを感じ取っているロイは「僕も軍人だから、そんなに心配しなくてもいいのに」と思ってはいるものの、いつも隣に寄り添ってくれる頼りがいのある存在に安心感を得て、最近は穏やかな日常を送っている。クリフが用意してくれるので、レーションや栄養剤だけでなく、ちゃんとした食事も摂るようになった。公私混同したくないので、住居は別のままがいいと話したが、クリフは同棲したがっている。いわく「あんたの私生活が心配だから」とのことだが、きっといつでも近くに居るための言い訳だ。けれど、自分だって仕事を言い訳に拒んでいる。だって、職場で一緒に居るだけでこんなにどきどきするのに、自宅でも一緒だなんて、心拍数が乱れて仕事にならなくなってしまう……。

「ロイ」

考え事をしていたら、耳元でクリフに名前を呼ばれる。  階級ではなくてファーストネームだった。ということは、この後は──。

「すこし甘えたくならないか。施錠したし、訪問者のスケジュールもない」
「あ、あなたはそうやって、いつも……!」
「ん、したくないのか? おれはロイのこと愛したい。いま、ここで」

穏やかな日常に、ときおり挟まる情事の誘い。  職場でそんなことをするのにはまだ抵抗感があるけれど、ロイはいつだって最後にはクリフの言葉に従ってしまう。僕を淫らに変えてしまったひと。

「なあ、ロイ……」
頬に指の背を添えられ、耳の後ろまでするりと優しく撫でられる。そうされると、正直な身体はびくりと反応して。楽しそうに微笑むクリフの唇が下りてきたらもう、ロイに残された手段は一つしかなかった。彼の唇を受け入れて、ジャケットを床に落とす。無骨な指が一つずつシャツのボタンを外していく間、肉体は疼きを抑えられなくて、熱い吐息が漏れてしまう。ふと、クリフが手を止めてロイの目を見上げながら言う。

「で、するか?」
「ここまで煽っておいて、よくそんなことが言えますね。クリフさん」

残りのボタンを自分で外し、ロイは白い肌をクリフの目の前に晒した。どうですか、と言わんばかりに胸を突きつける姿は大胆過ぎて、そのくせ、指がちいさく震えている。

「悪かったよ。あんたはちょっと、いじめたくなるんだ」
顎をすくって軽く口づけ、こめかみに顔を近づける。「じゃあ、今日もまた新しいこと覚えような」悪魔の囁きのように甘やかな低音に鼓膜を犯されたロイは、短く息を吐いて「はい♡」と応えた。その瞳はすでに蕩け、下腹部の奥はきゅうと鳴いている。

未知なる快楽の追求は、まだ始まったばかり──。

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続編:素人淫乱宇宙飛行士マク◯ライド少佐45歳~未知なる快楽追体験の記録~ vol.2