穏やかな朝が訪れる。鳥の鳴き声、そよ風が木々の葉を揺らしていく音。
カーテンの隙間から差し込む陽光が、トニーの顔に降り注いだので、彼は気持ちのいいくらい自然な目覚めを感じていた。今日はいい日かもしれない。仕事も休みで、こんなに目覚めもいい。たまには朝の散歩にでも出かけようか。しかし、その期待にふくらむ今朝の予定は、次の瞬間、オーガストとソロの叫び声で粉々に散ることになった。
「だから! どうしてこうまともに卵が割れないんだこのガキは!」
「割ってるだろう! 見ろ、スクランブルエッグにはなる!」
「殻まみれだろうが!」
まったく、穏やかではない騒ぎだ。ベッドから身を起こしてキッチンへ向かうと、ソロはいつものように朝食を作ろうとしているらしく、エプロンを掛けていた。一方、オーガストは上半身裸のまま、手を卵液でべとべとにしながら喚いている。どうやら、朝食作りの手伝いでもめているらしい。
「トニー! こいつの手伝いはいらないっていってくれ……」
「トニー! 俺だってあなたに朝食を作ってあげたいんだ! だから、」
「ストップ。オーガスト、朝食はソロに任せよう。彼に任せれば間違いない」
「でも!」
「そのかわり、君の手づから食べるから」
それを聞いたオーガストは、きらきらと目を輝かせて「ぜったいですよ!」と嬉しそうにいってからシャワーを浴びにバスルームへ向かった。
「はあ、君は彼を甘やかしすぎるんじゃないかと思い始めたよ」
「かわいい後輩なんです」
「いいねえつくづく、年下くんは」
ふてくされて卵の殻を取りにかかっているソロを、トニーはかわいそうに思って、ひとつキスをしてご機嫌をとる。効果はてきめん。「しょうがないな」と苦笑するソロ。なんだかんだいって、彼も年下の後輩には甘いのだ。