21. ベスト・ラヴァーズ・フォーエヴァー

 うわ、とローリーが思わず声を上げた先を見ると、きらびやかなホリデーシーズンの雑貨と並んで黒いキャンドルの箱が陳列されていた。よく読めば、おどろおどろしいフォントで「グリムリーパーのキャンドル」と書かれている。どうやら趣味の悪いパーティーグッズらしい。死神のキャンドルだなんて。しかも、そいつは黒いローブを羽織って大鎌を持った伝統的なスタイルの死神を象っている。

「笑っちゃうよね、ほんとの死神はこんなんじゃないのに」
「同感。あいつが見たら何て言うことか」

──ふむ、人間の想像する死の擬人化とはこんなものなのか。

 あいつこと、本物の死神たるジョーの真似をしてきょとんとした顔をするローリーが面白くて、僕はつい吹き出してしまった。近くを通った人たちがびっくりしていったけれど、そんなのどうでもいい。ジョーに身体を奪われてから、そしてそれが返ってきてからこっち、ずいぶん図太い性格になってしまったような気がする。

「ねえローリー、一つ買ってってみる?」
「はあ? 金もったいないよ。どうせジョーは見てもスンとしてジンジャーブレッドクッキーの方がいいとか言い出すんだ、きっと」
「いいじゃん、僕のお小遣いから出すから」

 買う、いや買わない、と一悶着していたら、「これが痴話喧嘩というやつ?」と言ってくだんのジョーがやって来た。そうだ、クリスマスマーケットに来てみたら、あんのじょうはぐれてしまったジョーを探していたんだった。彼にはお金を渡していなかったはずなのに、何故か両手に湯気の立つココアとワッフルを持っていた。

「あーっ! お前、無銭飲食か!?」
「違う。寒いしお腹が空いたと言ったら店の人がくれた」
「そ、それって死神の不思議な能力で……?」
「いーや、こいつの顔のよさに騙されたんだ。どこの店? 金払って来る」

 息巻くローリーをよそに、僕は僕とそっくり同じ顔をしたジョーのことを「顔がいい」と評価されていることに照れてしまう。そっか、僕って顔のよさ抜群なんだ。しかし、同じようにマーケットを巡っていても奢られたことなんかない。ひとえにジョー独特の「成人なのにおぼつかないちぐはぐした感じ」が放っておけないと思わせるのだろう。

 店なんかいちいち覚えてない、とか、物には対価が必要なんだよ、とか一悶着しているふたりを眺めていたら、これこそ痴話喧嘩だよなあと思ってしまった。僕はジョーのこういう天真爛漫さを諦めているけれど、ローリーはどうも諦めきれないらしい。そういうところは、彼に対して情があるんだろうな。

 僕とは違う繋がりを持つふたり。でも、それに嫉妬とか羨望とかすることはなくて、ただ愛おしいなあと感じる。この中ではいちおう年上(といっても、神の最後を看取るまで存在し続ける死神なんてものは無視して)だし、妹を持つ兄でもあるので、なんとなくふたりのことは可愛い弟たちみたいに思えてしまうのだ。

「な、あんたもそう思うだろ」
「君は別にいいと思うよね」

 突然、ローリーとジョーが同時に僕へ話しかけてきたけれど、なんのことか分からなくて「君たちって息ぴったりで仲がいいね」と言ったら、ふたりしてぽかんとしたあと、ローリーには怒られ、ジョーには「そうとも、僕らは仲がいいんだ」と自慢されてしまった。