22. すてきかもしれないホリデイ

「で、これが色違いで買ったマフラー」

 首に巻いているそれを指しながらコブが照れて言うのに、ジェイはきらきらした目で「いいなあ、羨ましいなあ」と感激し、ダニーは「ほーん、(束縛強そうな贈り物で)いいな、似合ってる」とオブラートに包みまくった感想を伝えた。三人でクリスマスマーケットを冷やかし、一息つくためにホットワインを買って座ったところだった。

 コブはマックスと贈りあったクリスマスプレゼントのマフラーを気に入っているらしく、このシーズンはもう毎日のように使っているのだと言う。「彼もね、気に入ってよく巻いているんだ。かわいいとこあるよね」と笑うコブに「かわいいのはお前だ」とダニーは思ったが黙っておくことにした。マックスに伝わると誤解を産んで面倒なことになりそうだからだ。

「二人はクリスマスの予定って、やっぱりうちでゆっくりするの?」

 恋バナか。と突っ込みたい気持ちを横に置いて、ダニーは「あいつ仕事だけど、まあ地球には居る予定だからな。ケーキでも買ってきて食うか」と答える。そもそも、クリスマスを祝うことにあんまり馴染みがないのでダニーはロイに任せっきりだった。けれど、ロイもクリスマスを積極的に祝う感じでもないらしいので、家にはツリーのポストカードが一枚飾ってあるだけだ。

「わあ……距離感のスケールが大きい」
「情操教育が必要……」

 コブとジェイがよしよしとダニーをハグする。情緒的なことは分からないが、美味い飯と酒があればオッケーだろ、と言うダニーに「じゃあうちにあるワインを一本送るよ」とジェイが言い、「スポンジに生クリーム塗るだけのケーキの作り方教えてあげるね」とコブがメモをしてくれた。

「で、そういうお前らはどうなんだよ」

 礼を言ってから、自分だけ晒されるのはどうなんだと二人に聞くダニー。コブは「うちは子どもたちがいるからにぎやかなクリスマスになるよ。でも、夜はマックスと、ね……」なんて意味深に言葉を濁す。ワインで乾杯したいよね、のね……なのだが、ジェイとダニーにはしっぽりとした年齢制限ものの場面が浮かんでしまった。無理もない。

「僕の邸では恒例のクリスマスパーティーを開催するよ」

 だから、たぶんラスティとふたりっきりにはならないかな。とちょっと寂しそうに呟くジェイ。彼は名の知れた実業家だから、対外的な行事の方が優先なのかもしれない。「それに、彼は忙しそうだから。最近全然連絡もくれないし。きっとクリスマスに泥棒するんだ」うー、とむくれるジェイを今度はコブとダニーがハグした。

「お前のこと放っておくなんてよくだよな、あいつ」
「恋人を大事にしないなんてだめだよ、愛は育むものなんだから」

 でも、でも、最後に会ったときはゆっくり美術館を巡ってね、お気に入りの絵の前で手を繋いだまま三十分も眺めていたんだ。言葉がなくても分かるんだ。彼と僕は繋がっているって。と言い訳するように添えるジェイは、ほんとうにそう信じているみたいだった。あの男、クリスマスにジェイを尋ねなかったらケツを蹴っ飛ばしてやる。と、ダニーは固く誓った。

「あ、リックもこれから来られるって」

 スマホに届いたショートメッセージを確認したコブの台詞に、「なあ、リックはクリスマスどう過ごすと思う? 俺はピザとマルガリータに十ドル」と、ダニーがにやりと悪どい顔をして賭ける。「さすがにクリスマスまで同じメニューじゃないでしょ。シャンパンも開けるに二十ドル」

とジェイが悪ノリし、いい子のコブは「まったくもう、彼に悪いよ」と言いつつ紙幣を預かり、「リックが来たら聞き出さなきゃね」と楽しむ気満々なのであった。