「なあ、クリフに何やったらいいと思う?」
ダニーがショッピングモールの広告を片手に、ちょっと困ってるという調子の声で聞いてくる。「僕も悩んでる。クリフさん、なんでも喜んでくれそうだけれど」ロイも悩んでいた。なんでも喜んでくれそうだけれど、せっかくなら驚かせたい。それがふたりの気持ちだった。
三人で関係を持つというのは、恋人へのクリスマスプレゼントを選ぶとき、同じ悩みを抱える相談相手がそばにいてくれるのがいいところのひとつだと思う。普段ロスに居るクリフがクリスマス休暇でこっちに長く留まれるので、ロイもダニーも張り切っているのだ。
とくに、ダニーは「三人だったらホールケーキ食えるな!?」とうきうきしている。十二月の初週に早々と予約を入れていたので、ロイも有名なチェーン店でフライドチキンの限定パックを予約した。ふたりとも、浮かれたパーティを自宅でやる習慣がなかったので、手探りでのクリスマスなのだった。
「普段使える物がいいんじゃないかな」
「おっ、恋人の主張激しく行く感じ?」
「そ、そうじゃないけど……クリフさん、頓着しないからこないだとか……」
靴を脱いだら穴の空いた靴下を履いていたのを見て、ダニーでも「ねーわ」とドン引きした事件のことである。「まだいけんだろ」「いや、ねーよ。見苦しい。新しいやつ買え」とすぐにスーパーで三足五ドルもしない新品の靴下を買わせた。温暖なロスでは素足でも、ロイたちの住む地域は雪も降るし、ブーツに裸足は寒かったのだろう。ありあわせの物を履いてきたらしいが、靴下から親指のぴょこんと飛び出た様子はかなり面白かった。
「じゃあさ、際どい下着とか! 俺らも楽しめるじゃん?」
にやにやと上目遣いで迫るダニーにたじたじとして、ロイはソファの肘掛けの方へ逃げ腰になって寄る。「何いじめてんだ?」と、突然上から振ってくる声。
「いじめてねーよ、困らしてんの」
「よけいタチわりいじゃねえか」
三人分のココア(マシュマロの代わりにブランデーが入ってるやつ)を持ってきたクリフが、ロイとダニーの座っているソファにぎゅっと詰まってくる。それに「狭い」と誰も言わないのは、この距離感に慣れ親しんでしまったからだろう。「さんきゅー」と真っ先に自分の赤いマグカップを取るダニーに、「ありがとうございます」とそっと青いカップを受け取るロイ。クリフは、色別に揃えた三人のマグカップのうち黄色いひとつを取って「何話してたんだ」と聞いた。
「あんたへのクリスマスプレゼント」
「そうだ、クリフさん、何が欲しいですか?」
「あー……俺がサンタを信じるガキだったら泣いてるぞお前ら」
そういうもんか、そういうものなんですか、そういうもんなんだよ。というコメディみたいな流れに、クリフはくくくと喉の奥で笑う。まったく、この情緒のいびつなくせして可愛げのあるふたりには飽きないよ。と、たいして変わらない自分のことは棚に上げて思う。
かたわらに置き去りにされたモールの広告には、プレゼント特集と題して装飾品なんかの写真がたくさん載っていた。手袋、マフラー、どれもよくある贈り物の定番だ。ふと、子ども向け商品のある写真を見て、クリフはいいことを思いついたとばかりに「なあ、こういうの三人揃いで買ってみようぜ」と提案する。
──はたして後日、頭にぽんぽんと防寒用の耳あてまでついたかわいらしい色違いのニットガイド帽子を被って雪道を歩く三人がいたとか、いないとか。